11月の句会
今月の題は「夜」と季語の「蓮の実」です。
蓮は俳句の素材に良く使われ、「蓮の花」「蓮池」は夏の季語ですが、秋になると「蓮の実」あるいは「蓮の実飛ぶ」の季語になり、最後は「敗荷(ヤレハス、ハイカ」や「破れ蓮(ハチス)」としていろいろな俳句に登場します。しかし実際に蓮の実が飛ぶところを見ることも少なく、難しい兼題となりました。
以下今月の先生入選5句と会員4名の当月句を掲載します。
今月の入選句
蓮の実の天に任せて飛ぶ構え 桑島 久乃
蓮の実の飛んで一村暮れにけり 桑島 貞明
自転車の籠にも乗らず冬来たる 小川 亶
形なき物音を聞く夜寒かな 沼田 重子
行く秋の風に耳貸す夜半かな 野崎 幾代
蓮の実の耳を澄ませば天の声 浅野 浩利
今月の会員句
時移り落葉一葉何を問う 八尋 晃
蓮の実が夜の静寂に飛び入りぬ 坂井 正巳
文旦の香り満ちたる重さかな 下山 道郎
何気なく人の恋しき十三夜 西 聡太郎
<会員の紹介>
今月は徳弘多史さんです。
徳弘多史さんの博学ぶりは広く知られていますが、内外の古典・現代文学、詩歌から絵画、音楽等の分野にも造詣も深く、特に言葉については句会の中でも教えられることが多くあります。年齢を感じさせないエネルギッシュな日常とは異なり、繊細で情緒溢れる俳句を披露されています。
以下代表句です
むすびてはほどく水の輪さつき雨
ふるさとの遠き海鳴りうるめ焼く
人の去り薄日とどむる枯れはちす
夜の底青きかげひく雪むすめ
祝箸秘めし八十路のこころざし
夕紅葉水面の吐息空深し