3月の句会
今月の句会は南雲愁子先生から近来にない良い出来の句会と講評がありました。春の気配を感じたせいか、会員の皆さんの詩情を刺激し多くの傑作が出され、先生の8句選は厳選を極めました。兼題の季語も「啓蟄」とまさに春兆す状況を捉え、早春の名句がそろいました。以下今月の入選句と会員の作品です。
今月の入選句
剪定の音の膨らみ雨上がる 蓮尾 碩才
お水取り我が青春の火の粉散る 佐道 正
あくびして実のなき話葱坊主 中島 篤三
啓蟄の日の当たる場所一番地 花房 俊明
啓蟄や家庭菜園深呼吸 土方 元夫
流せない流したくない雛流し 八尋 晃
啓蟄の地鳴き雲間を昇りいく 二反田昌雄
今月の会員句
ねぎ背負い老女がひとり家路かな 坂井 正巳
啓蟄や髪刈上げし首を撫で 下山 道郎
啓蟄や青大将の通り初め 西 聰太郎
啓蟄や全細胞よ動きだせ 鹿児島俊之
春立つやポップコーンのよく跳ねて 浅野 浩利
<会員紹介>
今月は野崎幾代さんです。
幾代さんは三人いる女性会員の一人で、年齢的にも当句会では最年少の会員です。俳句に取り組む姿勢は積極的で、二か月ごとに開催している吟行を兼ねた散策会には毎回参加しています。句柄は女性らしい細やかな表現を使い、情緒あふれる句となっています。しかし時にはみんなを驚かせるような力強い句も披露され、何時も先生の入選対象句となっています。以下代表句です。
蓮の葉に涅槃の世界広がりぬ
酔いし父語り部となり終戦忌
鶏頭の赤ふつふつと並びをり
幾重にも深き色出す冬薔薇
つまが手に新茶の香りうつりをり
今生を風に預けし鯉幟
(蓮尾 碩才 記)