新年度の四月句会は、模様替えした落ち着いた雰囲気の会議室で開かれた。尾上、横田両氏が欠席投句され、会員全員が投句された。
今月の兼題は高田氏が出した「猫の恋」でした。会員それぞれ一句以上の「猫の恋」の句がありました。
季語「猫の恋」は季語として登場するのは旧く江戸時代まで遡ります。その経緯は角川俳句大歳時記の解説では、「滑稽、諧謔を好む俳諧の世界は、卑近な猫の求愛に格好の句材を見いだした。芭蕉をはじめ蕉風俳人が盛んに詠むようになった。人間の傍らで暮らす動物であるだけに、この時期の猫の様々な生態は細かく観察される。俳人は本能のおもむくままに恋やつれした猫の姿に、人間の恋を重ねて、洒脱にユーモアをこめて詠んできた。(坂本宮尾)」。その時代の句を、前記歳時記から紹介します。「猫の恋止むとき閨の朧月(芭蕉)」「声たてぬ時が別れぞ猫の恋(千代女)」「巡礼の宿とる軒や猫の恋(蕪村)」などです。
今回は猫の句、オンパレードで紹介いたします。お楽しみください。
猫の恋蒼い夜空に蛍光灯 森 茂生
顔顰(しか)む清少納言や猫さかる 横田 侃
寄り添いて垣根に忍ぶ猫の恋 吉田 慶三
春の宵三毛白黒の狂騒曲 渡辺 恬
猫の恋終へて優しき夜明けかな 石澤 貞男
飼い猫の恋間延びして町の夜 井上 知登
猫の恋我が家の犬も騒ぎけり 大屋真理子
片思い越すに越されぬ猫の恋 尾上 俊平
五線譜に爪ひっかけてうかれ猫 勝浦かよ子
恋猫に女主人もあきれ顔 菅 治
猫(ねこ)道(どう)を踏みはずさずや猫の恋 高田 信義
猫の恋夜泣き競り合ふ赤子かな 竹之下晴美
猫の恋協奏曲と観念す 津田 良夫
猫の恋秘めたる声のあり無しや 虎井 勝義
恋猫の小首かしげてガラス越し 西岡 重毅
丑三つの天引き裂いて恋の猫 二反田昌雄
恋の猫毛並整えすまし顔 藤井 桂子
妻出掛け昼寝邪魔する猫の恋 水川 秀樹
さて、皆さん。どなたの句が気に入りましたか。ご感想をお聞かせください。
(井上知登 記)