今月の兼題は「虫」でした。

虫は秋の代表的な季語で、草むらで鳴くいろいろな虫の総称です。傍題として虫の声、虫集く、虫時雨、虫の闇など沢山の使われ方をしていますが、句会の皆さんの作品は以下の通りです。

写真は９月の特選句「秋暑し眺めしままの料理本」の野崎　幾代さんです。

以下特選句・入選句と会員の句を掲載します。

今月の特選句

無花果を捥ぐ袖口に白き乳　　　　　　中島篤三

せせらぎや高き低きに虫の声　　　　　坂井正巳

万灯の影引く草にちちろ虫　　　　　 　蓮尾碩才

 

入選句

遠巻きの街は灯となり虫時雨　　　　　小川亶

おほかたの星の揃ひて虫時雨　　　　桑島久乃

小雨降る木犀の香の強まりぬ　　　　野崎幾代

ガラス窓一枚隔て台風裡　　　　　　　佐道正

 

会員の句

座るなら女人のとなり金木犀　　　　　花房俊明

虫すだく客の一人の無人駅　　　　　　土方元夫

木の実降る池に水輪ををちこちに　　桑島貞明

煙突に月はりつけてをりにけり　　　 大崎太郎

遠ざかるほど金木犀香りをり　　　　 徳弘多史

鈴虫鳴く愁ひし胸の澄みてゆき　　　下山道郎

虫時雨小石をそっと投げてみる　　　鹿兒島俊之

やわらかなひとことありて菊日和　　浅野浩利

貼り紙で担ぎ手募る秋祭　　　　　　 中川昌明

仲秋や切れあじ深き彫刻刀　　　　　葛巻正樹

(蓮尾碩才 記)