3月は全員出席の句会でした。合評には各人が忌憚のない感想を発表したり、選に漏れた句も俎上に載せたりで、場が大いに盛り上がり、時の経つのを忘れるほどの楽しい句会でした。
今月の季題は、津田良夫さん出題の「春眠」でした。その解説では、『唐の孟浩然の詩「春眠暁を覚えず、処々啼鳥を聴く」に基ずく季語。暖かくのどかな春は誰でもが、どの時刻でも眠いのである。きびしい冬の期間、人間の活動は鈍くなり睡眠時間も長くなるといわれる。冬から春になると夜明けも早くなり気分が高揚し活動量も増え、結果的に睡眠時間も短くなり、快適な温度もあいまって眠いのだという人もいる。』(角川俳句大歳時記より抜粋)とあります。
選句者の多かった句を中心に、ひとり一句、ご披露いたします。
ご感想をお聞かせください(井上記)
大屋 真理子 春めきて走る児童の声弾む
勝浦 かよ子 どよめきて闇駆け昇る奈良の春
菅 治 春眠に誘う雨音遠くなり
高田 信義 桜餅一ついかがと祝八十路
津田 良夫 春眠を貪りてなお夢現
虎井 勝義 梅四・五輪小振りの枝を見逃さず
西岡 重毅 初孫に時の流れし雛飾る
二反田昌雄 浮き進む淡き機影や春の海
藤井 桂子 電車ごと春を色彩りマッピング
水川 秀樹 春眠に暁破る妻の声
森 茂生 引揚げ時雛と別れていばら道
横田 侃 畑打や土竜の塚をひと打ちに
吉田 慶三 春眠しもらいあくびに笑み交す
渡辺 恬 草萠や今日一日の畑仕事
石澤 貞男 二人して来し方語る春の宵
井上 知登 春耕や土の匂ひの立ち昇る
尾上 俊平 春眠に若き旅路をたぐりよせ